一般知識
「DXしましょう」の次の月曜に、何が変わるか 情報産業の話は、用語が先に歩くと中身が消えます。ここでは、日本の会社がいま困っていること、生成AIで実際に出ている効果、発注の前に棚卸しするとあとが楽な点だけを置きます。数字は調査の年と出典を付けています。将来の人数は、測定値と予測を混ぜません。
人手は、まだ足りない。ただし「壊滅的」一色ではなくなった IPA の「DX動向2026」は、2025年度に企業へ聞いた結果です。DX を進める人材の「量」がやや不足、または大幅に不足と答えた企業は85.5%です。まだ大多数です。一方で「大幅に不足」だけを見ると、2023年度の62.1%、2024年度の58.5%から、2025年度は50.1%まで下がっています。足りないこと自体は続いていて、いちばん厳しい答えは少し減った、という読み方です。
DX推進人材の「量」が大幅に不足、と答えた割合。IPA「DX動向2026」図表4-1 「質」の側は、不足と答えた合計が2024年度の86.1%から2025年度は88.8%へ、わずかに増えています。大幅不足だけは58.9%から52.9%へ下がりました。人数の悲鳴は少し和らいで、中身が足りない感覚は残っている、という並びです。
育成の予算を「増やした」と答えた企業は2025年度で25.6%です。2024年度の23.8%とほぼ同じで、「変わらない」が約半数です。不足感があるのに、教育費は横ばいの会社が多い、と調査は書いています。
スキルを把握している会社では、質が「大幅に不足」の割合が40.6%。把握できていない会社では64.0%です(同じ調査の図表4-10)。道具を足す前に、社内で何ができるかを紙にすると、不足の感じ方が変わる、という結果です。
小さい会社は、人材の前に「やる意味」で止まっている 同じ調査で、DX に取り組んでいない理由を人数規模で分けると、景色が違います。従業員100人以下では「自社が DX に取り組むメリットがわからない」が54.0%で一番多い。101人から300人では、知識不足と、戦略を描く人、現場で動かす人の不足が上位です。意欲はあるが担い手がいない、という層です。
100人以下で目立つ理由 101〜300人で目立つ理由 調査の要約 メリットがわからない 54.0% 知識不足、統括する人の不足、現場で進める人の不足 発注の入り口 「DX」ではなく、毎週くり返す一つの作業を名指しする 誰がオーナーで、現場の誰が入力するかを先に決める
提案書の一行目が「最新技術の導入」だと、100人以下の会社には届きません。届くのは「予約の二重入力を、受付の電話中にやめる」のような文です。
生成AIの効果は、いまのところ社内の速さに寄っている IPA の同じ冊子で、AI 導入の効果は「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%です。次が「企画提案の品質や速さが向上した」48.9%、「残業が減った」29.2%。外に向いた成果は小さく、「顧客満足度が向上した」4.5%、「売上や利益が向上した」3.9%です。
AI導入で挙がった効果。IPA「DX動向2026」図表3-14。複数回答 導入と運用の課題は「専門人材が不足」50.1%、「効果やリスクの理解不足」45.8%、「利用ルールを作りにくい」39.7%です。人、理解、ルール。この三つが上位で、モデルの名前は出てきません。
クライアントの関心が「うちもチャットを置きたい」だけなら、一度止めます。参照してよい社内資料があるか。個人情報をプロンプトに貼らないルールがあるか。無い状態で置くと、速い間違いが社外に出ます。資料がある繰り返し作業(議事の要点、請求書の読み取り、問い合わせの仕分け)から入った方が、上の91.6%側の効果に近いです。
2030年の不足人数は、2019年のシナリオである 「2030年に IT 人材が数十万人足りない」という話は、経済産業省が2019年に出した需給の試算がもとになっています。条件を変えた複数のシナリオで、不足の幅が違います。いまの在職者を数えた結果ではありません。記事によっては最大約79万人、別の要約では約45万人と、同じ報告書の別の列が一人歩きしています。
政策の側では、デジタル田園都市国家構想として2022年度から2026年度の5年間で230万人のデジタル人材を育てる、という目標が経産省の資料に残っています。目標であって、2026年10月時点の到達人数をこのページでは書きません。確認できた途中経過は、2023年度に目標約35万人に対して約51万人、2024年度上半期で目標約48万人に対し約44万人、という2025年5月の報告書の記述までです。
発注の判断に使うなら、2030年の大きな数字より、自社の「誰が入力し、誰が直すか」の方が先に効きます。業界全体が足りないことは、IPA の85.5%がすでに示しています。
この先、発注側が見ておくと得なこと 予測を断定しては書けません。調査から言えるのは、次の三つが同時に起きている、ということだけです。人がまだ足りない。生成AIの手応えは社内作業に寄っている。小さい会社は目的が言語化されないと動かない。
状況 だから、最初の一手 新しいシステムの担当を、社外にずっと置けない 更新する画面を、社内の人が触れる形にする。WordPress や kintone で足りる部分は、そこで止める AI は売上より、作業時間に効いている会社が多い 週に何時間かけている繰り返し作業を一つ測ってから入れる メリットを言語化できないと、100人以下では検討が止まる 経営計画の言葉ではなく、受付や経理の一つの手間で提案する スキルを把握している会社の方が、質の不足感が低い 外注の前に、社内に残す作業と外へ出す作業を分ける
見積の前に、五つの質問だけ先に書く その作業は、いま誰が、週に何回やっていますか。 間違えたとき、客に見えるミスですか。社内で直せるミスですか。 見てよい人と、直してよい人は同じですか。 最初の公開に入れる範囲と、半年後でいい範囲は分かれますか。 生成AIを使うなら、参照してよい資料の置き場所は決まっていますか。 この五つが埋まると、技術の名前は後から足せます。埋まらないまま「AI対応」「DX対応」とだけ書くと、三か月後に画面の項目で争います。技術ごとの中身は 学び 、こちらの対応範囲は スキルシート に分けてあります。
主な出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査。人材は図表4-1、4-3、4-7、4-10付近。取り組まない理由は図表2-4。AIの効果と課題は図表3-14、3-16) 。デジタル人材230万人の目標と2023〜2024年度の途中実績は 経済産業省「デジタル人材育成プラットフォームの取組について」(2025年5月) 。2030年の需給ギャップは 平成30年度 IT人材需給に関する調査(みずほ情報総研、2019年3月) のシナリオであり、現在の実測人数ではありません。